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第4回 芸術の秋に「野外劇場」と「小さな画廊」

更新日時2010.12.13

この秋、とても異色の公演を観ました。10月23日、24日の2日間、静岡県舞台芸術公園、野外劇場「有度」で上演された「世界は踊る~ちいさな経済のものがたり~」という作品です。タイトルからして「ん・・・?」難しそうですね。私が観劇したのは23日、月の美しい夜でした。日本平にあるこの劇場の存在を県民の皆様はご存知でしょうか?古代ギリシャの遺跡で見るような素晴らしい野外劇場が、実は私たちの静岡県にもあるのです。その夜は、日本平の木々と茶畑、そして輝く月がまるで舞台の大道具に見え、木々を揺らす風の音や虫の音が、普通の劇場と異なるやわらかい静けさを醸し出していました。

異色というのは、「経済」という難しいテーマのこの作品がノンプロの市民参加によって成り立っているという点です。作品の内容は、アメリカの金融危機で路上に放り出された黒人家族が、なぜそうなってしまったのかを、物々交換の時代のポリネシアから現代までを辿って哲学者が解き明かす、というもの。一般市民の日常の生活のしぐさそのものが演出家のパスカル・ランベール氏と共同演出の大岡淳氏によって舞台上の芸術のパーツにきちんとデザインされ、4人のフランス人女優、解説する哲学者と共に舞台が構成されていました。私が仕事にしているデザインの分野でも昨今、プロとノンプロの境目がわからなくなっていますが、ノンプロを演出するプロの存在感を演劇の世界で感動をもって拝見しました。

そして、その一般市民の中に藤枝市内の中学生の女の子も出演していた事は驚きです。学校が終わってから何日も日本平に通い、厳しいレッスンを受けたそうです。中学生という多感な時期に世界的に活躍する演出家やフランス人女優たちと共に時間を過ごした経験は、彼女のこれからの人生にきっと素晴らしい価値を与えてくれるでしょう。そうしたチャンスが一般市民に開かれていることがなにより素晴らしいことだと思います。さらに、静岡県でこの公演を可能にしたのは、日本で初めての公立の文化事業集団SPACの存在、そして静岡が誇る合唱指導者、音楽青葉会の戸﨑裕子氏の存在・・・ですね。

もうひとつ、藤枝市のアートカゲヤマ画廊で10月25日から31日まで行われた展示会、静岡市在住の造形作家の石山潤氏の個展について。個展のタイトルは?k??a(空)。天空の空ではなく、仏教でいわれる空(固定的実体もしくは「我」の無い事や、実体性を欠いている事)をテーマにした作品です。石山氏は数十年にわたり、このテーマで木、紙粘土、様々な素材を用いながら蛍光色を用い、造形作品を創りつづけています。部屋を暗くし、ブラックライトで映し出された作品達。自然光の中で見るとき感じる物質感が、ブラックライトの中ではすっと消えてしまい、不思議な感覚に包まれます。モノは見せ方でこんなにも姿を変えるものなのか…、実体とは何だろう、と問いかける展示会でした。

静岡県内にも個性的な展示会を開催する画廊がいくつもあります。美術館の企画展も素敵ですが、たまには小さな画廊巡りもいかがでしょう。

プロフィール

森田みか デザイナー(M's Plan代表)、(有)創造工房専務取締役、静岡デザイン専門学校企画室長。
「メイド・イン・静岡プロジェクト」("静岡ならではの"ものづくりに価値と未来を見出すプロジェクト)を進めています。

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