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第9回 静岡市美術館「歌川国芳展」

更新日時2011.09.14

7月と8月、静岡市美術館で「歌川国芳展」を見ました。静岡駅前「葵タワー」に開館した市美術館の5回目の展覧会です。国芳は、かねてより注目していた浮世絵師であることもありますが、実は、別の意味でも開催前から楽しみにしていた展覧会でした。というのは、静岡の前に開催された大阪市美術館で予想を大きく超える12万人余の観覧者を記録したことを聞いていたからです。国芳が大阪でブレークしている、という情報に触れ、果たして静岡でどれだけの人が訪れるか、期待と不安をもって会場を訪れました。

7月8日、開会式に出席後、前期展示を見ました。入口が混雑していたので、後半から見学しました。まず驚いたのは、作品の状態のよさ。保存状態のみならず摺りがいいのです。後で聞いたのですが、訪れた浮世絵の専門家もこんな状態のいい国芳は見たことがないと言っていたそうです。浮世絵版画を見るとき、その摺りの状態は重要です。当初の色彩、鋭い線描など、絵師の息吹を感じさせてくれます。

国芳は、北斎や広重と同時代に生き、武者絵に新境地を開いた人気の江戸っ子浮世絵師。最近、浮世絵ファンのみならず、デザイン関係者や若者世代の注目を浴び、国際的にも高く評価されるようになっています。本展は没後150年を記念し、国芳芸術の全貌を紹介した大規模な展覧会。総点数421点を前後期で展示する「史上最大級・空前絶後」な展覧会でした。

国芳が現代にブレークする要因を私なりにまとめましょう。まず、迫力ある武者絵の世界。劇画につながるダイナミックな構想・・・描かれている内容がわからなくても心を打つのです。次にユーモアあふれる戯画。人がかたまって顔を作るなんていう発想には度肝をぬかれます。落書き風の似顔絵や、影絵の趣向などなど・・・会場でも所々で笑いがもれていました。そして、動物や魚などを擬人化する表現。金魚が団扇を持ち手をつないで遊ぶ様子や、猫などの動物を描いた作品は現代人に受けることでしょう。ジブリのアニメーション映画『千と千尋の神隠し』(監督:宮崎駿)を思い起こされた方も多かったと思います。動物の擬人化は、古くは絵巻物の《鳥獣戯画》が知られますが、カラー化された作品としては、国芳画がそのルーツと言ってもいいでしょう。この発想は、実は自由に生きた江戸町人の文化から生まれたもので、日本が世界に誇っていい文化なのです。

今回の歌川国芳展、静岡会場の最終観覧者数は3万余とのこと。会場側では予想数を超えたことに満足されているようですが、私は、展覧会がよかっただけに、少し残念に思いました。静岡でブレークしたとは言い難いからです。国芳に対する知名度が足りなかったとは思いますが、ネームバリューだけでなく、作品の面白さがもう少し口コミで広がってほしかった。

しかし、見られた方(特に若い人)の中には、浮世絵の面白さに目覚めた方も多かったでしょう。これを契機に日本の伝統文化のすばらしさに触れていただきたいと思います。古き良き時代を回顧するだけではなく、新しい日本の文化を創造するために。

プロフィール

飯田 真 (静岡県立美術館 学芸課長)
専門は日本美術史(近世絵画史)。1985年、岐阜市歴史博物館学芸員。1990年から、静岡県立美術館学芸員。2007年より現職。現在は、静岡市文化財保護審議会委員。1991年「平井顕斎展」、1995年「描かれた日本の風景展」、2001年「描かれた東海道展」、2007年「名所絵展」など担当。論文多数。

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