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第11回 伊豆半島で最も古風な人形操り・海名野の人形三番叟を観る

更新日時2011.11.10

「とふとふたらり たらりや たらりあかりららりふ」この呪文のような歌謡で始まる人形三番叟を、ここ十数年欠かさず観に通っている。場所は、伊豆半島は西伊豆町中地区海名野の神明神社だ。11月2日の晩方と3日早朝に奉納されている。わたしは、3日の早朝7時半には、海名野の神明神社境内に立つよう心がけている。本殿に続く石段を登りきるとナギの大木が左右鳥居のように生い立つ。伊豆ではナギの葉は荒れる海を凪ぐといって神聖視され、船乗りは必ず神社のナギの葉をいただいてお守りにする。また夫婦円満にもご利益があるという。海名野の神明神社が建つ裏山を金山(かなやま)と呼び、徳川家康に金山奉行を命ぜられた大久保長安が、この金山から金鉱石を掘ったと伝える。そこから、金山開発の成功を神明神社に奏上して叶い、その返礼に人形三番叟を奉納したのだという説もある。

この人形三番叟は、千歳、翁、三番叟で演ずるもので、「たらりあかりららりとふ 天下泰平国土安穏のこんにちのご祈祷なり 万歳楽 万歳楽」と謡にもあるとおり、翁の白の尉、三番叟の黒の尉による<寿ぎ>の芸能である。正式には人形式三番叟で、人形浄瑠璃の前段で舞台を浄めるために演ずるものだった。

伊豆半島にはなぜか西海岸線に沿って人形三番叟が伝承され、文楽のように三人遣いのところと二人遣い、一人遣いのところがあり、伝承地によってその人形の操り方が異なる。なかでも「突っ込み」と呼ばれる一人遣いはここ海名野だけで、人形の両手と頭を一人で操り、これは人形浄瑠璃の古い操り方と考えられる。ただ、三番叟は、始め頭と足の二人が操り、ヘンバイを踏む鈴の段になって、左手が加わり三人遣いになる。

現在、三番叟の頭を操る窪田高志さん(49歳)は、27歳のとき、勇義社(伊豆では若者組を基に作られた結社で芸能を伝承する)に入社。最初は地謡を2年務めた。次に千歳を5年務め、その後三番叟の足へ移り、翌年すぐに頭へと進む。三番叟の頭役がトップを勤めることからエリ-トコースまっしぐらだったわけだ。窪田さんは初め謡をやったことが今役立っているという。

この海名野の人形三番叟でまったく観客の目に入らない「つけ木」役がある。拍子木で床を叩き、三番叟が大地を踏み悪霊を鎮めるヘンバイの瞬間に気を注入する役だ。堤敬志さん(53歳)は、影に徹している自分を褒めたいという。確かに、影で支える人あってこその人形三番叟だ。人形の操り方、鼓、地謡とつけ木、幕引きなど黒子役も全て村の男たちで伝承して来た。現在一番若い須田優一さんが29歳というのが少々心配だが、伊豆半島で最も古風な人形操り突っ込みの人形三番叟はまだしっかり伝えている。

プロフィール

八木洋行(やぎようこう)1948年 藤枝市生まれ
日本民俗学会会員 静岡県民俗芸能研究会代表 県文化財団発行・「しずおかの文化新書」編集長  民俗芸能に関する著書・・・『村ごとの舞』(静岡新聞社)、『静岡県の民俗芸能』(桜風社)、『引佐町史 民俗芸能編』引佐町、『ふるさと静岡県文化財写真集 4民俗文化財・無形文化財編』静岡県教育委員会・・他。

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