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第12回 長船恒利展に触発されて

更新日時2012.04.06

とりわけ寒さを感じる今年の1月、藤枝市内と静岡市内の三会場で開催された長船恒利氏(1943-2009)の遺作展を見て廻った。この展覧会は、アートカゲヤマ画廊(2012.1.16~22)、ギャラリーエスペース(2012.1.9~22)、ギャラリーSen Sen Ci(2012.1.14~2.12)で開催されたもので、アートカゲヤマ画廊では写真として「在るもの」のシリーズと、彫刻の仕事を、ギャラリーエスペースでは写真の「Landscape」「traverse」、ギャラリーSen Sen Ciでは写真の「Praha」シリーズといった作品を展示したと、言うことができる。しかし、そのような総括的な言い方は、故長船恒利氏の本質から大きく離れている事はいうまでもない。

多彩なジャンルを横断した表現者としての長船氏の一部分しか理解できていなかった私は、長船氏を実に良く理解した企画者による今回の企てにより、自身の鑑賞領域の狭さ、見るという行為のあやふやさを大いに認識させられた。

アートカゲヤマ画廊では、壁に飾られた一枚の写真に驚愕を覚え、机の上に置かれた膨大な数の紙焼をめくった。その作品は、私の住んでいる場所に程近く、ほぼ毎日といってよいほど通る場所でもあった。「在るもの」と名づけられた一連の写真の中で、その写真に特に惹きつけられたのは、私には見えなかった、長船氏の見た或いは見せた“在りかた”に愕然とさせられたからであり、“錬金術的”とも思われる暗室処理を推理し、素のままに近い紙焼なら如何なのかを半ば焦りにも似た気持ちで捜す事になった。その紙焼が私の見え方と左程違わない事を確認した時に、奇妙な安堵感と共に私は写真が理解できていなかった事を思い知らされた。

ギャラリーエスペースでは、写真連作「Landscape」「traverse」の静謐な表現を掻き乱すかのように中央に映し出された映像の中に、パフォーマンスを行う長船氏の在りし日の姿を、しかし、懐かしさではなく、表現者として見る自身の変化にも驚きを感じた。

ギャラリーSen Sen Ciでの「Praha」や東南アジアでの写真作品でもそうなのだが、没後回顧展にありがちな郷愁にも似た感情は拒絶されるばかりであり、その表現の鋭さに認識を新たにさせられる。

「意味の生成」として、見る私たちに問いかけられたこれらの静謐な作品群は、謎解きの答のみならず、長船氏の「機械時代からメディア時代へとうつろいゆくに従って、「作品」より“演奏”という形態に近づいていくという予感」への答を求めている様にも思われた。

プロフィール

立花義彰(たちばなよしあき)美術研究者
昭和29年(1954)静岡市の生まれ。昭和52年(1977)年京都市立芸術大学美術学部西洋画科卒業。平成8年(1996)まで静岡県立美術館学芸員。現在、西蔵寺住職のかたわら、屋外彫刻調査保存研究会、静岡県博物館協会、明治美術学会等の場で、台湾や静岡の近代美術史基礎資料研究の発表を行う。

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