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第21回 ガムラン・アンクルン ~バリのもうひとつのガムラン~

更新日時2015.01.22

2014年11月29日(土) 浜松市楽器博物館

音楽のまちとして知られる浜松市は、国際ピアノコンクールやオペラコンクールが開催され、吹奏楽、合唱、オーケストラなど西洋芸術音楽の活動が盛んな街である。さらに楽器博物館では世界各国の楽器の展示以外にも、さまざまなコンサートが開催されており、世界音楽をさまざまな形で発信している。ただ、西洋音楽以外の諸民族の音楽となると、他地域からの招聘に頼らざるを得ない状況にある。そうした中、昨年11月29日に浜松市楽器博物館のイブニングコンサートの一つとして行われたインドネシア、バリ島のガムラン音楽のコンサートは、浜松市にある静岡文化芸術大学の学生たちが演奏したユニークな催しだった。

浜松市楽器博物館は、インドネシア、ジャワ島とバリ島の大編成のガムラン楽器を一式所有し、一階フロア―に展示されている。しかし今回は、静岡文化芸術大学の所有するガムラン・アンクルンとよばれる小さな楽器を用いたガムラン編成が演奏された。コンサートのサブタイトルに「バリ島のもう一つのガムラン」とあるのはその理由からである。

静岡文化芸術大学は音楽の実技を教える学科はないため、あくまでもサークル活動の一環として演奏活動を行っている(ただしガムラン実技は授業の一つとして設けられている)。2013年に大学に設立したグループ「スアラ・チャンダSuara Canda」は、「音と戯れる」という意味のバリ語であり、まさに学生たちが新しい世界の音楽に挑戦し、苦闘しながらも、その音と戯れる様子をグループ名に表現している。すでに日本でガムランの演奏活動団体をもつ複数の大学により行われたイベント「ガムラン・ユニバース」(2014年7月、東京藝術大学にて開催)等にも参加し、積極的な演奏活動を行っている。

この演奏会では、大学教員と職員、ゲストの演奏者3名以外はすべて学生だけにより構成された。さらには演奏だけではなく、東京から招いた踊り手による三つの舞踊(マルガパティ、バリス、チェンドラワシ)が披露され、その伴奏音楽を見事に演奏したことは驚くべきである。設立して間もない演奏グループであり、まだまだこれから成長していくグループだが、今後の活動が楽しみである。

このコンサートを通して思うことは、「音楽の地産地消」である。浜松はこのコンサートが終了した二日後の12月1日にユネスコ創造都市ネットワーク(音楽部門)に、アジアで初めて加盟した。しかし創造都市にとって重要なことは「市民の創造的活動」により街そのものが活性化しなくてはならない。どんなに演奏会がたくさん行われたところで、それが浜松で一時演奏され「通過」していくだけでは市民の創造的活動にはなかなか繋がっていかないだろう。

このガムラン活動は、これまで浜松にはなかなか見られなかった諸民族の音楽にとりくむ「音楽の地産地消」の事例である。浜松市に通う学生たちによって、浜松市民の人々の前で演奏が披露されたからだ。地産地消されるのは、野菜や果物、肉や野菜のような「ハード」である形あるものばかりでなく、「ソフト」である音楽もまたそうあるべきだ。本演奏会はそうした浜松市の音楽活動の在り方を示唆したものであり、今後は、浜松市のみならず県外でも演奏できるレベルのグループとして成長することを切に願っている。

プロフィール

梅田英春
 静岡文化芸術大学文化政策学部芸術文化学科教授。バリ島の影絵人形芝居(ワヤン)と儀礼研究、やインドネシアの芸術文化政策の研究を行う。その一方、ワヤンの上演者として日本各地で公演を行う。著書は『バリ島ワヤン夢うつつ』(2009)ほか多数。

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