ささえる、つなげる、創造する ふじのくに文化情報センター

ホーム > カルチャーレビュー > 石田徹也展 ノートをたどる

第22回 石田徹也展 ノートをたどる

更新日時2015.03.26

静岡県立美術館で開催中の「石田徹也展 ? ノート、夢のしるし」を観覧してきました。

石田徹也は1973年焼津市生まれ。武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科に進学し、1995年(22歳)より「3.3㎡展」(ひとつぼ展)をはじめとする数々の公募展に出品、受賞を重ね、若き気鋭の画家として期待されながらも、2005年、31才の若さで夭折しました。本展では、石田の代表作110点に加え、アイデア帳、スケッチブックなどが初公開されています。これらのノートが、作品の理解を深めるうえで、大きな手掛かりとなりました。今回は、展覧会を楽しむポイントとして、石田徹也のノートを少しご紹介します。

現存するノートは51冊で、様々な内容のものが残されています。絵のラフスケッチや、創作への思いを記した文章から、自分が見た映画の批評、飲酒量を図る計算式、求人広告の切り抜きまであります。ノートが、創作活動、日常生活を問わず、常に作家のかたわらにあったことを伺わせました。展示室では、完成作を紹介する流れに並行して、各所にノートが配置されています。ノートを見ていくと、普段は見られない創作の秘密を垣間見るような感覚を覚え、完成作を見るときとは違う好奇心がかき立てられました。

これらのノートには、石田の作品を語る上で、興味深い点がいくつもありました。そのひとつは、石田が自分の創作活動について記した文章です。彼が目指したものが、よく分かる内容になっています。以下は、いずれも石田が都内の美術大学を卒業した翌年、1997年(24歳の時)に記したものです。

僕の求めている(今)ものは、苦悩の表現であったりするのだが、それが自己れんびんに終わるような暗いものではなくて、他人の目を意識した(他人に見られて、理解されることで存在するような)ものだ。[中略]
僕の求めているものは、悩んでいる自分を見せびらかすことではなく、それを笑いとばす、ユーモアのようなものだ。

1997年のアイデア帳より

自分も環境を拒むと不安を感じられる
不安感を表現にするため、肯定できない自分と環境を用いるが、自分も環境も選ぶことができないし、拒むこともできないので、ギャグや皮肉などで対象化したい。する。

1997年4~12月のアイデア帳より

石田の絵には、必ずある男性が描かれます。石田は彼を「他人の自画像」と呼びました。

石田は、この「他人の自画像」を、器物と同化した姿で、もしくは器物自体に嵌まり込んだ姿で描きます。日常にはありえない姿から、それは唐突な面白さをもって表されますが、現実世界に実在するイメージを重ね合わせ、優れた造形感覚と繊細な筆致で説得力を持たせていることで、その面白さは、劇的な効果を生み出します。「ユーモア」「ギャグや皮肉で対象化」するといった彼の言葉は、作品の造形的特徴を表すうえで、重要なキーワードであると感じました。

文章以外にも興味深い点がありました。ラフスケッチの内容です。石田の絵の特徴のひとつに、人物や風景を、デフォルメして描写することが上げられます。これは石田の生涯にわたる特徴ですが、実は、ノートにもその証左と言えるものがあります。アイデアスケッチは膨大な量が描かれていますが、人物、風景の写生は極めて少ないのです。(注1)直接的な理由は分かりませんが、自らの夢を記し続けた「夢日記」を見ると、専ら自分の心に立ち現れるイメージを表すことに専念した様子がうかがえます。夢を記す、というと少し奇妙に聞こえるかもしれませんが、石田は絵と文章で夢の内容を細かく書き記しており、イメージの源泉として重要視していたことが伺えました。

アイデア帳やスケッチブックは、本画が完成するまでの、画家の思索の過程を示しています。それ故、他人の眼に触れる機会はあまりありません。石田の没後、各地で展覧会が行われましたが、アイデア帖やスケッチブックを丹念に調査し、紹介した本展は、石田徹也を研究するうえで、重要な機会であると言えるのではないでしょうか。

郷土ゆかりの画家の創作活動を捉えなおす、大変興味深い展示です。ラフスケッチと完成作を見比べながら、もしくは、文章から石田の思索を追いながら、ぜひ多くの方に石田徹也の作品の世界をお楽しみいただければと思います。

注1:「石田徹也展 ノート、夢のしるし」展覧会カタログ238ページより

プロフィール

青木良平(あおきりょうへい) 静岡市美術館学芸員
昭和56(1981)年石川県生まれ。
平成19(2007)年、金沢美術工芸大学美術工芸研究科芸術学専攻卒業。
現在、静岡市美術館にて、広報業務を担当。

戻る
文化芸術の総合相談窓口

ふじのくに文化情報への現在の登録件数

文化団体
275
アーティスト
73
文化施設
203
個人
73

登録はこちら

ご利用ガイド

  • グランシップ
  • アトリエふじのくに
  • ふじのくにささえるチカラ
  • ふじのくに文化資源データベース
  • しずおかイーブックス

ふじのくに文化情報への登録はこちらから

静岡県文化情報総合サイト「ふじのくに文化情報」に、ご登録いただきますと、様々な形式での情報発信が可能となります。
詳しくはご利用ガイドをご覧ください。