ささえる、つなげる、創造する ふじのくに文化情報センター

ホーム > カルチャーレビュー > 国本武春浪曲出前公演を聞いて

第23回 国本武春浪曲出前公演を聞いて

更新日時2015.04.02

あなたは浪曲(浪花節)をご存じですか?

ご年配の方なら、昔ラジオで聞いたことがある、父親が好きでよく湯船で「旅行けば、駿河の国に茶の香り…」とうなっていた、などという記憶があるかもしれません。かく言う私(団塊の世代です)も、実はその程度の知識しか無かったのですが、先日グランシップのアウトリーチ活動のおかげで、その実演に初めて接しました。

浪曲とは、いわゆる伝統芸能の中では新しいもので、江戸末期に誕生し、明治になって全国に広がった演芸です。三味線を伴奏に、多くの人々がよく知っている話を語り、独特の節回しで歌うというもので、明治半ば以降一世を風靡し、昭和になってラジオ放送が始まると、聴取者の好む番組の第1位に選ばれ、その人気は昭和30年代まで続いたと言われます。

さて、私が今回聞いたのは、そうした「伝統的」な浪曲ではありません。国本武春さんという歴としたプロの浪曲師が、子どもたちのところに出向いて公演した、きわめて「現代的」な浪曲でした。簡単に概要を紹介しますと、まず開幕そうそう、いきなり「ロックンロールうらしま」、子どもたちがよく知っている浦島太郎の話をエレキ三味線の曲に合わせて語り歌うのですが、途中からウサギとカメの話に変わっていきます。その後「笑おう」などオリジナルソングを歌った後、浪曲とは何か、なぜ自分は浪曲師になったのかなどの話。そして宮本武蔵の「巌流島うた絵巻」と続きます。

エレキ三味線で「ロックンロールうらしま」というとまさに現代的で、子どもたちのみならず大人の先生や私も浪曲にいだいていた古くさいイメージはすっ飛び、ぐっと引き込まれます。しかし、ロックで浪曲を演じるというのは現代的ではありますが、「伝統的」でもあるのです。というのは、浪曲はその誕生以来、常にその時代に流行している曲を用いてきたからで、エレキやロックを使うというのは浪曲の伝統だからです。このように時代に対応できるというのは、浪曲が今日も生きている芸能であることを表していると言えるでしょう。

浪曲についてはこれくらいにして、グランシップのアウトリーチ事業についても少し触れておきたいと思います。アウトリーチとは、普段芸術や文化に触れる機会の少ない人々に対して、芸術文化に触れる機会を設けようと働きかける活動で、主に学校や福祉・医療施設などで「出前公演」などを行う教育普及活動です。最近は多くの文化施設や芸術団体などが取り組むようになってきましたが、グランシップでは10年ほど前から実施してきており、特にこの浪曲を始め、講談や文楽、能楽など伝統芸能に力を入れているのが特徴です(もちろん、クラッシック音楽やジャズ、演劇なども行っています)。昨年度は県内各地で12事業、40カ所で開催されたということです。

このようなわけで、もしかすると皆さん方のお子さんが学校で浪曲や講談などを聞いていて、お子さんの方が皆さんより、伝統芸能に詳しくなっているかもしれませんね。

プロフィール

伊藤裕夫(イトウ ヤスオ) 文化政策研究者、元静岡文化芸術大学教授
広告会社、シンクタンク勤務後、2000年から静岡文化芸術大学教授、2006年富山大学教授。現在は、日本文化政策学会会長をつとめる他、静岡文化芸術、立教大学、慶應大学等の大学院で非常勤講師。専門は、文化政策、アートマネジメント。近著に『アーツマネジメント概論(三訂版)』(共編著・水曜社、2009)、『公共劇場の10年』(共編著・美学出版、2010)など。

戻る
文化芸術の総合相談窓口

ふじのくに文化情報への現在の登録件数

文化団体
277
アーティスト
75
文化施設
206
個人
77

登録はこちら

ご利用ガイド

  • グランシップ
  • アトリエふじのくに
  • ふじのくにささえるチカラ
  • ふじのくに文化資源データベース
  • しずおかイーブックス

ふじのくに文化情報への登録はこちらから

静岡県文化情報総合サイト「ふじのくに文化情報」に、ご登録いただきますと、様々な形式での情報発信が可能となります。
詳しくはご利用ガイドをご覧ください。