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第27回 第7回知半アートプロジェクト「エア・コンサート」を鑑賞して

更新日時2015.3.16

平成28年3月5日(土)、伊豆半島の中伊豆エリアに位置する伊豆の国市の古民家<知半庵>にて、第7回知半アートプロジェクト Concert of the Airs「エア・コンサート」(昼・夜)が開催された。

美術・文化という視点から地域の資源や伝統を活用して創造・発信して交流を深める活動は全国的に行われているが、知半庵での活動は県東部伊豆半島を代表するそうしたイベントのひとつである。

私にとって伊豆大仁という地は、未だ20代後半の頃に知り合った囃子方能楽師に誘われ、広瀬神社で催された奉納芸を観に訪れたのが最初で、この地域は古き良き伝統文化が土地に縁のある若者によって引き継がれているという印象を強く受けたことを今でも覚えている。そして今回のイベントに参加して、ここに暮らす人々の手によって芸術文化を享受し育む伊豆文化の営みが今尚息づいていることを実感した。

知半庵は伊豆箱根鉄道駿豆線の大仁駅から三島方面へ10分程歩いた沿道に佇む歴史ある古民家をベースとした建物で、旧下田街道沿いの閑静な住宅街の一区画にある。敷地の周囲は石壁に囲まれているため、地元人以外はここに歴史的建造物があるとは思わないだろう。知半庵は江戸時代の民家で、伊豆の庄屋・旧菅沼家の屋敷であり国の有形文化財(旧菅沼家住宅)なのである。

知半庵の名称は、現当主粟屋信子氏の祖父菅沼謹吾氏の雅号「菅沼知半」に因んだもので、謹吾氏は多くの芸術家、文化人と交流した。現庵主も、祖父の精神を受け継ぎ、現代に生かしていくことを願い、2007(平成19)年から始動、年に一度、<アートをきっかけに気軽に人が集い、伊豆文化の香り、庵の心と共に「知半庵」の今を楽しんで>もらいたいと、文化交差をテーマとするイベント「知半アートプロジェクト」を開催しはじめたという。そしてもちろん、そのイベント運営は庵主に賛同する地元住民をはじめとする近隣の支援者によって支えられていることはいうまでもない。

さて7回目を迎える今回は、音の源泉(エア)への回帰をテーマとし、新・古、洋の東西を飛び越え、尺八・声楽・三味線・フルートの4つの音による競演という内容であった。

囲炉裏・神棚・仏壇そして壁に掛けられた唯念上人の防火盗の龍図が配された歴史を感じる室内は身近に音楽を聴くには程よい空間で、その囲炉裏の前がステージとなった。 出演はクリストファー遙盟(尺八/音楽監督)、きむらみか(ヴォイス)、本條秀慈郎(三味線)、木埜下大祐(フルート)という一流の音楽家4人。この素晴らしい出演者によって生み出される「音楽は空気(エア)の振動によって作られ、エアを通じて伝えられる」という事実を、リアルに理屈なしで感じる取ることできた。更に、演奏中に庭先から自然に聞こえてくる鳥の囀りや、庭で木を割る響きが室内に伝わってくる演出効果は、古民家ならではのものといえるだろう。まさに根源的な「音の魅力」を引き出すような、質の高いコンサートであった。このイベントは不定期ということだが次回の開催に大きな期待が膨らむ。

プロフィール

田中之博(たなかゆきひろ)
東京都出身。伊豆市資料館長。美術館学芸員を経て地域に視点を移した文化財支援活動に参画。元常葉大学造形学部非常勤講師(東洋美術史)。

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