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第3回 日本一の土俵と子供相撲

更新日時2010.02.17

富士山を模した土俵は高さが三、七メートルもある

富士宮市上井出の天満宮で、今年は九月十三日に秋祭りが行われた。2005年に建て替えられた社殿の前に氏子が参列し、厳かに神事が執り行われた後、地元氏子の幼児から小学生まで三十二名による子供相撲が奉納された。

学問の神さま菅原道真を祀る天満宮の境内には、富士山に模した土俵が築かれてあり、その高さは富士山の標高三七七六メートルの一千分の一で、三、七メートルもある。土俵の東と西にそれぞれ山頂の土俵へ続く階段が設けられてあり、呼びだされると、子供たちはそれぞれの階段を上って山頂の直径三メートルの土俵で相撲を取る。

行司役が持つ軍配は、天下泰平と書かれた本格的なもの。行司の「ハッケヨイ、ノコッタ」の掛け声で、子どもたちは土俵の真ん中でがっぷり組み合い、押し合い、転げ落ちそうになるたびに保護者からの歓声があがる。

「フンドシを取って」とお母さんからの声援。子供たちはみなパンツの上からフンドシを締めているのだ。ところがこのフンドシを掴んでの取り組みは小学校五、六年生でないと見られない。大抵押し合いが続いて、押し出しで勝負が決まる。それも押出す方が気を利かせて土俵際にまでくると力を抜く場合がある。すると抜かれた方がまた押し返す。そんな押し合いが続く長い取り組みが何番もあった。フンドシを掴んでのうっちゃりなどという大技は勿論出ない。もし土俵際でうっちゃりをやったら、うっちゃられた子供はそのまま斜面を転がりおちて行くだろう。

大人も山頂対決。賞品はお米一俵だった

積雪の富士山を模した土俵 地元の長老松下長一さん(昭和四年生まれ)によると、戦中から戦後も昭和三十年代までは、近在の相撲好きの青年や壮年たちがこの祭にやって来て、激しく闘ったという。食糧難の時に、優勝力士には、米一俵が賞品として与えられたので、激しい取り組みばかりだったという。土俵際でのうっちゃりは、投げられた方がそのまま土俵下まで投げ飛ばされる場面も何番もあったという。高さ3,7メートルの土俵から一気に真下に投げ落とされるのだから命がけだ。とにかく芝川町や富士市あたりからも相撲好きが集まっての山頂対決だった。

五、六年生の対決は篠原遼太君が優勝 現在は子供相撲だけになってしまったが、これには昭和四十年代から徐々に高度経済になって行き、町場に仕事が増えはじめると青年たちがこぞって村を出て行ってしまったからだった。一時そんなわけで途絶えたことがあった。それで、なんとか地元の小学校へ、子供相撲をやりたいので、協力してほしいと頼みに行ったが、なにしろ高さも尋常でない土俵での取り組み、もし子供たちに怪我人がでたら困るというので、小学校の協力はとうとう取り付けることができなかった。それでも地元の人々は、この富士山の形を模した土俵を変えようとはしなかった。そこで、学問の神さま菅原道真に相撲を奉納すれば、健やかに育ち、しかも勉学に励むような子供になるはずと氏子父兄たちに呼びかけ復活することができた。昭和五十八年のころだった。平成になってからは、次第に女子も参加するようになった。

フンドシを締めての対決

四苦八苦でふんどしを締めるお母さんたち この相撲大会に参加する子供は必ずフンドシを締めないと相撲が取れない。これは昔からの伝統だ。ところが、取り組みのさ中、すぐに解けてしまい、その白い尾っぽのようなフンドシの端を相手に踏まれてコケて負けてしまう子供も出る。お母さん方が締めてくれるはいいのだが、そのお母さん方がほとんどフンドシの締め方を知らないのだから無理はない。六尺フンドシの締め方をお母さん方に知ってもらうべく、いちど教習会を開いたほうがよいだろう。フンドシの締め方も文化のうちだから…。男女別の学年対決で高学年の五、六年生の対決は、市立上井出小学校六年生の篠原遼太君が優勝。優勝者は横綱と書かれた表彰状が授与される。二位は大関だ。横綱には米五キロ入った袋も副賞につく。大関には二キロ。篠原遼太君は、一年生のときからずっと参加してきたが、今回初めての優勝だという。その少しはにかんだ喜びの顔が、すがすがしかった。

頼朝の富士の巻狩の頃から

副賞の米俵を持つ女子横綱と大関 ところで、この富士山そっくりの土俵は、源頼朝による富士の巻狩の際に、武士たちが宴会の余興に行ったのがその始めとか…、頼朝が巻狩の際にこの高台に立ってその巻狩の様子を観覧したとも伝える。米糠とオガクズを混ぜて土俵とその周辺に撒き、いかにも雪をかぶった富士山を思わせるところなどはなかなかの演出だ。しかも観覧席からはこの土俵の向こうに本物の富士山が聳えている。これはまさに日本一の土俵だ。よくぞ、この土俵と子供相撲を伝えてくれたと感動する。同時に、富士山を世界文化遺産に登録へという運動が高まる中、この富士山を模す日本一の土俵と子供相撲は、富士山麓の貴重な民俗文化であり、まさに世界に発信すべき富士山文化遺産と言える。ながく伝えて欲しいものだ。

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