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第7回 東久留女木新田の大念仏

更新日時2012.02.28

引佐町で唯一の念仏組

緑豊かな東久留女木新田の景色浜名湖に流れ込む都田川の上流、県道二九九号線を都田ダムに向かって北上する。ちょうど浜北区、天竜区と境を接する四方を山に囲まれた静かな山間に、浜松市北区引佐町東久留女木新田はある。

全戸数四十戸足らずと小さな山村だが、お盆の時期はにわかに賑わいを見せる。東久留女木新田組の大念仏が行われる日である。新田組の大念仏は、他の地域にまで奉納しに行くことはほとんどない。東久留女木新田と川名に限定して大念仏を行っている。

大念仏に使用する提灯/思いをしたためた団扇を背に

念仏の団体が移動する様子 大念仏は本来、昨年のお盆以降、新たに亡くなった御霊を鎮めるのが目的である。新田組みは、若衆や大人はもちろん、子供の継承もあって、村人の多くが関わる家族的な雰囲気が特徴だ。

組長を務める山本久茂さん(七十三歳)は「昭和二十二年(一九四七年)故松原政晴さんと同級生4人が、戦争で亡くなった友人の供養にと始めたのがきっかけ。大平(現在の浜北区大平)に教えてもらいにいったのが始まりだよ」と話す。

「当時は物のない時代だったから、双盤や頭太鼓を近隣の村に借りて始めたと聞いたよ。昔は今のような娯楽もなかったから、若い衆の楽しみでもあったんだね」と笑う。山本さんは新田組の成り立ちを知る数少ない長老の一人である。

引佐町史などを見ると、江戸時代には引佐町内にも数多くの大念仏が行われていたとある。しかし、太平洋戦争で担い手が減り、双盤などの道具を供出で取られたりして、現在はほとんどが廃絶してしまった。

引佐町内に現存する大念仏はこの東久留女木新田組だけである。しかも、山本さんが話す通り、その発祥は戦後であるという。

ふるさと学級の功績

※大念仏の様子 しかし、なぜ東久留女木新田にだけ大念仏が残ったのであろう。もちろん、それは創始者の松原政晴さんたちの熱意もあっただろうが、山本さんは「『ふるさと学級』があったお陰」と話してくれた。

ふるさと学級とは、昭和五十三年に、当時の引佐町立川名小学校の校長が、郷土芸能を伝承する取り組みとして始めたもので、学校行事の一環として大念仏を子供たちに伝えてきた。

引佐町はひよんどり・おくないや、横尾歌舞伎など、多くの貴重な民俗芸能が息づく土地として有名であり、それら民俗芸能の継承には昔から深い理解があった。

東久留女木新田は、川名ひよんどりで有名な川名地区と学区を同じくするため、地域の伝統文化や継承活動に関して一層理解が深かったと推測される。学校の行事の一環として大念仏を子供達に伝えてきたことは、現在もこの地に大念仏を残す大きな原動力になったことは間違いない。

親子二代で支える芸能

大人に混じって子どもたちが頑張る姿も ふるさと学級が始まった昭和五十三年当時、小学六年生だった子供は、今年四十六歳になる。ふるさと学級で大念仏を習った子供たちは、今、親となり、その子供たちに大念仏を伝える番となった。

冨谷武宏さんも親子二代で大念仏を継承する一人。取材した八月五日も、双子の息子さん海人くん、健人くん(中学二年生)と、娘さんの朱里さん(六年生)と共に、練習のため公民館に集まった。朱里さんは「幼稚園からやっているから、少し練習すればすぐに出来るようになるよ」と元気に話してくれた。

しかし、東久留女木新田で育った子供達も、大人になり結婚して所帯を持つと、浜松など都会へ出てしまう人も多いという。

地元の農協に勤めながら子供と二世代で大念仏を伝承する山本政邦さんは「ふるさと学級も三十年以上続き、一学年一人ずつ子供がいたとしても、三十人以上の子供たちが巣立っていったことになる。東久留女木新田にとって大念仏は大切な行事。だから、ぼくらの子供達のそのまた子供達にも、ぜひ伝えていきたいと思う」と話してくれた。

満面の笑顔の子どもたち ふるさと学級は、地域に伝統文化を残してきただけでなく、地域のつながりや親子のふれあいなど、地域のコミュニティを守り活性化する意味でも大切な役割を果たしてきたといえるだろう。

しかし、ふるさと学級を続けてきた川名小学校も、平成二十二年三月をもって閉校となり、浜松市立井伊谷小学校へ統合となった。

「昔は小学生だけで十数人いたんだけど、現在は幼稚園の子も含めて5人に減ってしまった。今は中学生も含めて念仏を続けているけど、これからどう維持していくかが課題だよ」と山本久茂さんは話した。過疎化や少子化の波は、この小さな山村にもじわじわと浸食している。

取材の終わりに、ひときわ元気な古田佳菜美さん(五年生)に話を聞いてみた。「大念仏は楽しいよ。みんなで集まって、みんなでやるから!」と満面の笑みで答えてくれた。この子供達の無邪気さに、なぜかいろいろな心配も吹き飛ばされる思いがするのだ。

(レポート 鈴木一記)

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