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第11回 平島の辻相撲

更新日時2013.02.22

八月二十三日の地蔵盆に行われてきた藤枝市平島の子供相撲は、地蔵堂の前庭という他界への出入り口で行われる〈辻相撲〉と呼ばれる民俗行事のひとつです。相撲は素舞いが転訛したと考えられ、素裸になってまず大地を踏みしめ悪霊を押さえつけてしまいます。また互いに力の限りを出して取り組むことで、大いなる力を示し、外界からの厄災を防ぎ、災いをなす悪霊を寄せ付けないバリヤーを発揮して村の平穏無時・息災安穏と子供の健やかな成長を願うというものです。

藤枝市平島の地蔵堂 子供たちが作った飾りが並ぶ

平島の地蔵堂は田中城の大手門と東海道を結ぶ御成街道にあり、辻という感じがあまりしないのですが、よく見れば、光明寺に続く禰宜家小路と交差する場所にあり、地蔵盆にはこの二つの道筋に灯篭を飾るのを目の当たりにすると、ああ、ここがやはり平島の村落の内と外の境界にあたる辻だったかと理解できるのです。

辻は、あの世とこの世の接点であり、この世からあの世へと旅立った祖先の霊を慰める場所でもあったため、慰霊のための芸能も行われたのです。盆踊りもその一つですし、昭和三〇年代まではここで子供相撲のあと大井川町宗高の提燈屋清水次郎が座長の一座を迎えて芝居を上演したのだそうです。これは勿論村人が楽しむ娯楽だったわけですが、慰霊の意味もあったのです。昭和三〇年からは映画を上演するようになったとのことですが、時代に即してその都度内容も変化してきたことがわかります。

ところで、かつては祭礼の度に地蔵尊像をお堂の前を流れる小川で洗ったとのことですが、これは水浴び地蔵伝説にも通じることで、地蔵を清流で浄めることで子供たちの身体の祓い浄めになり無病息災を願うものだったと考えられます。

水浴び地蔵の伝説は、県内では川根本町の徳山の水浴び地蔵さん、遠州森町一宮谷崎の水遊び地蔵さんがよく知られています。森町の水遊び地蔵の話は、子供たちが石の地蔵さんを小川に運び込み、水を堰き止めて魚とりをしています。それを見つけた村の庄屋が子供たちを叱りつけてから、元の場所へ運ぶと「もうしわけありませんでした」と、手を合わせます。ところが、その晩、寝ている庄屋の枕元にお地蔵さんが現れ、「せっかく子供たちと一緒に遊んでいたに、余計なことをした。もう子供たちと水遊びしておっても子供たちを叱るでない……」と言ったのです。驚いた庄屋は、夜が明けると子供たちを集め、「昨日はすまなかった、これからはお地蔵さまと好きなだけ水遊びしてもいいぞ」と言って、たくさんのお菓子を与えたといいます。以来、谷崎の村では、このお地蔵さんを水遊び地蔵というようになったのです。徳山の水浴び地蔵さんの話も、おおよそ同じような内容です。ただ、こちらは、日照りが続き、雨を乞う時には、このお地蔵さんをお堂から出して大井川へ浸けると雨が降ると言い伝えます。水浴び地蔵の伝説は、子供たちが水浴びしているさなか、河童に引き込まれないよう見守っていてくれるのだとも解釈されています。

地蔵堂の前庭で行われる子供の辻相撲は、もう他所では見られない貴重な民俗行事ですから、永く続けていただきたいものです。この貴重な郷土の民俗行事を体感することで、子供たち郷土愛を心に育むのではないでしょうか。ただ、土俵では靴を脱ぎ、帽子も取って、できれば男子は上半身裸になって相撲を取るようにしてほしいのですがどうでしょう……。

境内に集まる子供たち

相撲は、地蔵堂の前庭で行われる なかには、男子と女子が対決する場面も 女子同士の対決もある 土俵際には父兄や集まり、辺りは応援の声で賑わう 小学生の男子の対決は勢いがある

(レポート 八木洋行)

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