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第1回 拡張する芸術。それを支える場を創るということ。

更新日時2015.10.23

スノドカフェ今から100年ほど前。場所はスイスのチューリッヒ。そこに一軒の飲食店があった。店の名前はキャバレー・ヴォルテール。時代は第一次世界大戦の只中で、戦火を逃れてチューリッヒに移ってきた亡命知識人の溜まり場がこのキャバレーだった。店主で作家・詩人のフーゴ・バルの元に集まってきたのはトリスタン・ツァラ、ハンス・アルプ、マルセル・ヤンコなど、後世に名を残す芸術家も多い。この場所で20世紀の始まりを告げる芸術運動ダダが生まれたといわれる。キャバレーでは音楽演奏や演劇、バフォーマンス、朗読、美術作品の展示などが数多く行われていた。その後次第に政治色の強い興行が増え、過激さを増していったという。

もし私が運営するオルタナティブスペース・スノドカフェのルーツを示せと言われたら、この店を引き合いに出すのは大袈裟だろうか。もちろんそうだろう。だが、たかが一軒の飲食店の可能性(ポテンシャル)を雄弁に語っているのは事実である。

スノドカフェではどうしたらその可能性を存分に活かせるのだろうか。この問こそがスノドカフェを始めて10年間取り組んできたことである。まずは芸術/芸術家への深い理解が必要であることは間違いない。人々の創造への欲求を受け止められる場所であること。そこには当然芸術未満の行為も含まれる。私がスノドカフェをオルタナティブスペースとしていることもそのような理由による。公の施設でもない、私的な専有空間でもない、誰にでも開かれた第三の場所であるがゆえに表現できることは少なくない。更には多様な人が出入りすることで偶発的/有機的なネットワークが形成されるという効果が生まれる。そうして予想しなかった新たな活動が醸成されていく。

カフェの活用と共に現在取り組んでいるのが2012年から年刊で発行している静岡発の芸術批評誌「DARA DA MONDE」と2013年に開廊したギャラリー「GALLERY UDONOS」である。芸術を支える活動をしていく中で、地方の芸術状況をもっと伝えていかなければいけないという想いを強くした。芸術情報はとかく大都市のもので埋め尽くされるが、この土地でも多くの芸術家が見逃せない仕事をしている。そのような行為を文字に起こし積み重ねていくことによって、静岡にも芸術のシーンがあることを伝えたい。雑誌という紙媒体によってカフェという物理的に制限された場を超えて多くの人に芸術との出会いを提供できればと思う。ギャラリーを運営するようになったのは、芸術作品をノイズを排除した場所で鑑賞するという、より純度の高い芸術との出会いの場を設けたいと考えたからだ。オルタナティブ的な活動と重ねることで、多様な芸術に数多く触れる機会が提供できるのではないだろうか。

カフェ、雑誌、ギャラリーによって創造的な活動をサポートしている中で次第に意識を強くしたのが、”パブリック/公共”という概念だ。グローバルな環境変化が生活の基盤である地域社会にも大きく影響し、それに伴いパブリックのあり方も急激に変化している。今やパブリックは自明で与えられたものでなく、私たち市民が積極的に創り出し獲得していかなくてはならないものだと認識を新たにしている。その時パブリックの再構築に芸術が一助を成しえると感じることが多く、芸術の社会性に改めて注目している。芸術は時代に先駆けて変化していったことは歴史が示している。キャバレー・ヴォルテールがそうであったように、次代を見据える芸術的創造が胎動する場を日々準備していこうと思う。

プロフィール

柚木康裕(ゆのきやすひろ)
オルタナティブスペース・スノドカフェ、GALLERY UDONOS代表。
静岡発芸術批評誌「DARA DA MONDE」発行者。
公共文化施設や教育機関との連携や様々な人が出会う「場」作りを通して、地域から発信するアートの支援活動を行っている。

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