ささえる、つなげる、創造する ふじのくに文化情報センター

ホーム > お役立ち情報トップ > お役立ちコラム > 第3回 文化団体が協賛・寄付金を獲得するには

第3回 文化団体が協賛・寄付金を獲得するには

更新日時2011.08.03

「新しい公共」という言葉が政府をはじめ様々なところで使われるようになってきている。第二次世界大戦後の日本社会においては、公共的なことは行政が担う、という考え方のもとで様々な施設が建設され、様々な行政サービスの充実が図られてきた。これらによって私たちの生活が豊かになってきたことは否定できない。しかし、今後の我が国においてこれを際限なく続けていくことは財政的にも技術的にも困難であり、また、たとえそれが実現できたとしても必ずしも望ましくはないだろう。こうした中、公共的な課題の解決を行政のみに委ねるのではなく、民間も行政と対等な立場で地域の課題の解決を担っていくような新たな社会システムが求められているのである。

具体的な表れとしてもっとも象徴的なのが民間非営利団体(NPO)への期待の高まりである。1998年の特定非営利活動促進法(通称NPO法)の施行以来、全国に様々な公益分野で42,387のNPOが設立されている(2011年3月末現在)。そして、そのうちの約33.6パーセントが「学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動」を目的としている。こうした中、2011年6月にはNPO法が改定され、税制面での優遇を受けられる認定NPOの基準が大幅に緩和され、3,000円以上の寄付金を100人から集められれば資格を満たすようになった。多くのNPOにとって現実的なハードルとなったので、認定NPOを目指すNPOの数は飛躍的に増大するものと予想される。個人や企業が民間非営利団体を支え、社会に必要な公共的なサービスが提供される時代に向かって大きな一歩を踏み出したといえる。

さて、民間非営利団体に対する寄付金控除が大きく拡大する中で、文化団体が協賛金や寄付金を獲得していく、ということはどのような意味を持つのであろうか。民間の支援者が寄付金控除の優遇を受けるということは、その支援者はこれまでよりも少ない負担で支援を行えることになるので、支援が拡大することが期待できる。しかし、ここで重要なのは、一方でその分国や地方自治体は税収を減らすことになるという点である。大震災の復興財源や高齢社会を支える年金財源をはじめ、税金の必要性が減少するというようなことは到底考えられない。つまり、税制優遇を受けた民間企業や個人から支援を受ける文化団体は、本来税金として納められていれば使われたであろう使途よりも、自分たちの活動によってもたらされる公益が大きいことを説明することが求められるのである。こうした説明を行い、人々に納得してもらうことを説明責任(アカウンタビリティ)と呼ぶ。

アカウンタビリティを果たすことこそが、文化団体が支援を受けるうえで最も重要である。そして、こうした説明において鍵となるのが、自分たちの行っている活動によってもたらされる公益が誰のどのような利益なのか、という点である。文化支援は、文化団体が恵まれない立場にあり、かわいそうだから助けているのではない。この点が生活保護をはじめとした福祉のサービスとは異なる。支援によって受益するのは、文化団体自身ではなく、文化団体の活動によって受益する第三者であることが求められるのである。演劇にたとえれば、支援によって受益するのが劇団員である、というのでは税金を減免してもらうことの説明にはならない。さらに言えば、受益者は演劇のチケットを買って鑑賞する鑑賞者である、というのでも説得力に欠ける場合が多い。なぜなら、もし、鑑賞者が受益者であるのだとすれば、鑑賞者がチケット代によって必要な費用をすべて負担すれば良い、というのが自由経済の基本原則だからである。レストランの食事でも、美容院のサービスでも、受益した人が料金を払うことによってサービスの費用がまかなわれている。もし、こうしたサービスに税金(寄付金控除を受けた民間支援を含む)による支援が行われたとすれば、多くの人は、なぜ、Aさんの食事代を自分が払った税金で負担しなければならないのか、という疑問を持つであろう。同様に、演劇好きのBさんの鑑賞活動をなぜ、私の税金で負担しなければならないのか、それならば、私のゴルフ代も税金で負担してほしい、と思う人があらわれても不思議ではない。ところが、この演劇公演の鑑賞者は、震災で家や両親を失った子どもたちだった、ということになれば、人々の反応も変わってくる。文化活動の直接的なお客さんが喜んでくれるということはとても重要なことであるが、それが税金で支える対象として人々の合意を得るためには、そのお客さんが誰であるかが重要である。

しかし、文化活動の受益者というのは、劇場の観客のような直接的なお客さんに限らない。ある地域の伝統芸能が保存され存続している、ということがその地域に住む人の誇りやアイデンティティにつながる、ということがしばしばみられるが、芸能の公演に行かない人であってもそのような満足を得るということは大いに考えられる。道路建設費が多少削られても、そのような伝統芸能が維持されることでまちの活性化につながる、ということもあるかもしれない。

「新しい公共」の時代、文化団体が民間支援を得るためには、自らの活動や存在の公益性をいかに説得力をもって説明できるかが何よりも必要になってくるのである。

プロフィール

片山泰輔 (静岡文化芸術大学 教授)
専門は財政・公共経済、芸術文化政策。日本文化政策学会理事長、日本アートマネジメント学会関東部会長、浜松創造都市協議会理事長。1995年、芸術支援の経済学的根拠に関する研究で日本経済政策学会学会賞(奨励賞)受賞。2007年、著書『アメリカの芸術文化政策』で日本公共政策学会学会賞(著作賞)受賞。

戻る
文化芸術の総合相談窓口

ふじのくに文化情報への現在の登録件数

文化団体
279
アーティスト
75
文化施設
207
個人
77

登録はこちら

ご利用ガイド

  • グランシップ
  • アトリエふじのくに
  • ふじのくにささえるチカラ
  • ふじのくに文化資源データベース
  • しずおかイーブックス

ふじのくに文化情報への登録はこちらから

静岡県文化情報総合サイト「ふじのくに文化情報」に、ご登録いただきますと、様々な形式での情報発信が可能となります。
詳しくはご利用ガイドをご覧ください。