ささえる、つなげる、創造する ふじのくに文化情報センター

ホーム > お役立ち情報トップ > お役立ちコラム > 第4回 文化政策に関わる法・制度 その1

第4回 文化政策に関わる法・制度 その1

更新日時2015.01.19

(1)文化芸術を創造し、享受し、支え、残していくために

文化政策に関わる法・制度は多岐にわたっている。日常生活における文化・芸術との関わりを考えてみよう。文化が生み出され、同時代の人々に親しまれ、後世に残し伝えられていくプロセスに、どのような法や制度が関わってくるだろうか。

新しい文化、新しい表現が生まれた時に、まず関わってくる法の1つは、著作権法である。著作権法は「著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与すること」(第1条)を目的としている法律で、著作者に著作物の利用許諾による創作のインセンティブを与えることを意図した仕組みだと言える。著作権保護のための特段の手続きは求められていない。つまり、プロでもアマチュアでも、その作品が著作物すなわち「思想又は感情を創作的に表現したもの」(第2条)であれば、著作権を主張できる。俳優、舞踊家、演奏家、歌手、指揮者、演出家など実演家と呼ばれる人たちには、著作権に代わって著作隣接権という権利が認められている。

文化政策においては、文化芸術を生み出す人々の創造性を支え、また文化芸術を享受することを支える、様々な文化施設の活動も重要だ。広い意味での文化施設として思い浮かぶのは、美術館、博物館、動物園、水族館などのミュージアム、劇場、音楽堂、文化会館、市民会館、図書館、映画館、公文書館、人によっては文化芸術活動の場を提供してくれる公民館やコミュニティセンターも文化施設に含めるかもしれない。
 ミュージアムは博物館法、図書館は図書館法の規定がある。博物館と図書館、そして社会教育法に規定のある公民館は、「社会教育施設」というカテゴリに分類され、法的位置づけが他の文化施設とは異なっている。逆に、劇場、音楽堂、文化会館、市民会館など、いわゆる公立文化ホールと呼ばれる施設は、長い間施設の位置づけを明確にする法律がない中で、現場の創意工夫によって運営されてきた。2012年に制定された劇場、音楽堂等の活性化に関する法律(劇場法)は、地方自治法改正による指定管理者制度の導入など公立文化施設の運営のあり方が問われる近年の社会状況において、施設の活動に対する法的基盤の整備を求めてきた関係者の積年の努力の賜物である。
 海外ではミュージアム(Museum)、図書館(Library)と共にMLAと並び称される公文書館(Archive)は、残念ながら日本国内ではまだなじみの薄い文化施設かもしれない。公文書館は、「歴史資料として重要な公文書等を保存し、閲覧に供するとともに、これに関連する調査研究を行うことを目的とする施設」(公文書館法第4条)である。日本の公文書館の運営には、例えば国立公文書館の職員の数が諸外国と比べて極端に少ないことをはじめとして、解決すべき課題が数多く残っている。国立公文書館のホームページでは、全国公文書館の一覧が紹介されており、静岡県内では磐田市歴史文書館が唯一事例に挙がっている(2015年1月現在)。

国や地方自治体の文化政策に求められるのは、人々の文化芸術活動や、それを支える文化施設の活動に関する、広い意味での環境整備だと考えられる。先進的な地方自治体では、文化振興条例や計画の整備が国に先駆けて進められていた。2001年に文化芸術振興基本法が制定されて、ようやく国レベルでの文化政策の法的根拠が整った。同法第4条が文化芸術振興に関する地方公共団体の責務を定めたことを受けて、より多くの地方自治体が、文化政策の法的根拠の整備に取り組み始めた。
 静岡県では2006年に静岡県文化振興基本条例を制定している。第2条では、「文化の振興に当たっては、文化を創造し、若しくは享受し、又はこれらの活動を支える活動を行うことが県民の権利であることにかんがみ、県民が等しく文化活動に参加できるような環境の整備が図られなければならない」として、文化芸術を創造すること、享受することに加えて、文化芸術を支える活動についてもスポットを当てた文化政策の推進をうたっている。

こうして産み出され支えられ多くの人に享受されてきた文化を、未来の世代に残し伝えていくための仕組みが、文化財保護法である。法隆寺金堂の火災をきっかけに1950年に施行された文化財保護法は、度重なる改正を経て、様々な文化の価値を保存、継承、そして活用できるような仕組みを整えてきた。
 ユネスコの世界遺産条約は1975年に発効し、日本は1992年から加盟している。2013年に世界文化遺産として、「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」が記載されたことは記憶に新しい。世界遺産条約は有形物のみを保護の対象としていたが、2006年には無形文化遺産条約が発効した。日本の文化財保護法の無形(民俗)文化財の考え方が、ユネスコの無形文化遺産の概念に影響を与えたとも言われている。

このように、文化芸術を創造し、享受し、支え、残していくプロセスにおいては、様々な法や制度が関わっている。

プロフィール

中村美帆 (静岡文化芸術大学 専任講師)
専門は、文化政策の法・制度に関する研究。主要著作に、「日本国憲法制定過程における『文化』に関する議論」(『文化資源学』第9号、2011年)、「戦後日本の『文化国家』概念の特徴」(『文化政策研究』第7号、2014年)、等。研究の傍ら、複数の自治体文化政策の現場で文化振興条例や計画の策定等に関わってきている。

戻る
文化芸術の総合相談窓口

ふじのくに文化情報への現在の登録件数

文化団体
280
アーティスト
78
文化施設
210
個人
80

登録はこちら

ご利用ガイド

  • グランシップ
  • アトリエふじのくに
  • ふじのくにささえるチカラ
  • ふじのくに文化資源データベース
  • しずおかイーブックス

ふじのくに文化情報への登録はこちらから

静岡県文化情報総合サイト「ふじのくに文化情報」に、ご登録いただきますと、様々な形式での情報発信が可能となります。
詳しくはご利用ガイドをご覧ください。