ささえる、つなげる、創造する ふじのくに文化情報センター

ホーム > お役立ち情報トップ > お役立ちコラム > 第4回 文化政策に関わる法・制度 その2

第4回 文化政策に関わる法・制度 その2

更新日時2015.01.26

(2)文化政策の拡がりと法・制度の在り方

文化政策というと「文化庁の政策」だと思われる方もいるかもしれない。文部省(現・文部科学省)の外局として1968年に設置された文化庁は、文化芸術振興基本法や劇場、音楽堂等の活性化に関する法律(劇場法)を所管し、日本芸術文化振興会や国立美術館・博物館をはじめ数々の文化に関する独立行政法人を所管し、日本の文化政策を語る上で中心となる省庁であることは間違いない。
 とはいえ、広い意味での文化政策は、狭い意味での文化庁所管の政策だけに留まらない。文化芸術交流、海外における日本語教育、日本研究・知的交流を担う外務省の外郭団体の国際交流基金(1972年設立)や、文化・芸術の振興による創造性豊かな地域づくりの支援を目的とする総務省の関係団体の地域創造(1994年設立)が、果たしてきた役割も重要だ。厚生労働省の外局だった社会保険庁に設置され、全国主要都市で鑑賞の場を提供してきた厚生年金会館についても、改めて検証が必要だろう。近年経済産業省が主導しているクールジャパン/クリエイティブ産業政策や、国土交通省の外局である観光庁の観光資源としての文化に対するアプローチも、文化を活用した文化政策と言える。国だけでなく、地方自治体の文化政策や、企業メセナ協議会、アートNPOをはじめとする民間の取り組みも看過できない。法・制度という観点からは政府の文化政策に焦点を当てることが多いが、広い意味での文化政策の主体は、政府に限定されるものではない。私たち一人一人が、文化政策の担い手だということもできよう。

文化政策の拡がりという観点から、日常生活とは異なる、いわば非日常の文化政策についても考えてみたい。
 兵庫県は2004年に策定した芸術文化振興ビジョンにおいて、「大震災の経験の中で、芸術文化が県民の暮らしに欠かすことのできない基本的な公共財であることが明確となった。これが、あの大震災の教訓である」と明記している。阪神・淡路大震災(1995年)でのボランティアの活躍が、市民活動の基盤整備のための特定非営利活動促進法(NPO法、1998年)成立につながったことは知られているが、文化芸術分野で活動する市民団体にも、法人格取得によって活動を進展させた例は数多い。東日本大震災(2011年)においても、被災地の文化財レスキュー事業、文化財ドクター派遣事業から、被災者の心のケアと復興支援、震災の記憶の継承に至るまで、文化政策として捉えられる課題が少なくない。
 災害や戦争はあってほしくない非日常だが、祝祭としての非日常の例として、オリンピックが挙げられる。スポーツの世界祭典として知られるオリンピックだが、オリンピック憲章は、オリンピック開催に際して、複数の文化イベントのプログラムの計画を義務づけている。2012年ロンドン五輪の文化プログラムでは、ロンドンに限らず英国全土1000か所以上で催しが展開された。2020年の東京五輪の文化プログラムにも期待が高まっている。

文化政策の拡がりに伴い、文化政策に関わる法・制度の在り様も多岐にわたっているが、法・制度を考える上で重要な基本理念として「文化権」がある。文化を享受したり創造したりすることを、個人の生まれながらの権利として認めるもので、第二次世界大戦以降、国際社会で議論が進められてきた。背景には、先の大戦中に行われたナチスドイツをはじめとする国家の文化統制に対する反省がある。
 1948年の世界人権宣言では、全ての人が「自己の尊厳と自己の人格の自由な発展とに欠くことのできない経済的、社会的及び文化的権利を実現する権利を有する」ことをうたっている(第22条)。それを受けて1976年に発効した国際人権規約(A規約)では、「文化的な生活に参加する権利」が明記されている(第15条)。
 2001年に制定された文化芸術振興基本法では、「文化芸術を創造し,享受することが人々の生まれながらの権利であることにかんがみ,国民がその居住する地域にかかわらず等しく,文化芸術を鑑賞し,これに参加し,又はこれを創造することができるような環境の整備が図られなければならない」と定め、自主性及び創造性の尊重、多様な文化芸術の保護及び発展についても基本理念に盛り込んでいる(第2条)。
 2006年に制定された静岡県文化振興基本条例では、「文化を創造し、若しくは享受し、又はこれらの活動を支える活動を行うことが県民の権利であることにかんがみ、県民が等しく文化活動に参加できるような環境の整備が図られなければならない」と定め、あわせて「県民一人ひとりの自主性及び創造性」「文化の多様性」の尊重、「多様な文化の共生」への配慮もうたっている(第2条)。文化権を考える上では、文化的な環境整備に加えて、文化に関わる個人の自主性及び創造性の尊重、文化多様性への配慮も重要である。

今日の文化政策は、様々な拡がりを見せている。それぞれの文化政策を支える法・制度の根幹の根底に、人々の文化権の実現という理念があってほしい。

プロフィール

中村美帆 (静岡文化芸術大学 専任講師)
専門は、文化政策の法・制度に関する研究。主要著作に、「日本国憲法制定過程における『文化』に関する議論」(『文化資源学』第9号、2011年)、「戦後日本の『文化国家』概念の特徴」(『文化政策研究』第7号、2014年)、等。研究の傍ら、複数の自治体文化政策の現場で文化振興条例や計画の策定等に関わってきている。

戻る
文化芸術の総合相談窓口

ふじのくに文化情報への現在の登録件数

文化団体
279
アーティスト
75
文化施設
207
個人
77

登録はこちら

ご利用ガイド

  • グランシップ
  • アトリエふじのくに
  • ふじのくにささえるチカラ
  • ふじのくに文化資源データベース
  • しずおかイーブックス

ふじのくに文化情報への登録はこちらから

静岡県文化情報総合サイト「ふじのくに文化情報」に、ご登録いただきますと、様々な形式での情報発信が可能となります。
詳しくはご利用ガイドをご覧ください。