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第5回 ファンドレイジングから見えること その4(最終回)

更新日時2015.11.17

前回紹介した寄付金の勧誘マニュアルは、資金調達専門会社がテレファンドレイジングで利用していたものを多少アレンジしたものです。実は、米国にはこうした資金調達を専門にしている会社があります。とかく一口に「欧米」と括られることが多いのですが、ことファンドレイジングに関しては、世界ひろしといえども米国のような国はないでしょう。これは国の成り立ちや培われてきた精神風土によるところが大きいわけですが、このことに触れると長くなりますので、別に機会に譲りたいと思います。

さて、このマニュアルから見えてくるポイントをいくつか挙げてみます。寄付の使途が「照明の留め具から~」というくだりは、いかにも無駄なく有効に寄付金が使われているかといったことが伝わります。また寄付金により、チケット料金の低廉化、オーケストラの質と教育プログラムの維持が図られること、ひいてはこの寄付金集めの成功がオーケストラの「生死」を決めるといったくだりは、ぎゅっと心を掴むのではないでしょうか。そして、オーケストラが活躍することによる地域のステータス向上や経済波及効果といったところは、やはり郷土愛を持つ人々の琴線に触れるのではないでしょうか。寄付額に応じた数々の特典も寄付意欲をそそる仕掛けになっています。

いずれにしても、「お金がないから」支援してくださいではなくて、地域にとって、あるいは社会にとって「必要があるから」支援してくださいというストーリーになっていることが大切です。

本コラム「その1」で「ファンドレイジング活動は、単なるお金集めといった経済活動ではなく、その活動によって芸術や芸術団体に対する理解者を増やし、その裾野を広げていく大きな原動力になっている」と述べましたが、仮に個人寄付者が数万人とすれば、その数万人に、その芸術団体の収支構造や、果たしている社会的役割、実績や地域における芸術的、経済的効果といった寄付が支える重要な事柄について理解が広がっていることを意味します。このことが経済的利益と同等以上に重要なのではないかと思います。

もう一つ、理解者(支援者)の裾野を広げる利点を付け加えるならば、それはマネージメントで重要視すべきリスクヘッジ(回避)の問題です。補助金に頼っていた大阪のオーケストラや文楽協会が、首長の補助金大幅カットにより混乱に陥ってしまったのは記憶に新しいと思います。米国の場合、財政的支援者は第一に個人寄付者であり、それに州、郡、市などの公的助成や民間財団の助成が加わるといったように多岐に渡ります。どこかが何らかの事情で財政支援がタイトになってもリスクが分散されているため、その影響は最小限にくい止めることができるといったことが言えます。

「ファンドレイジングから見えること」のポイントを書き綴ってみました。いかがだったでしょうか。今回は小口の個人寄付者への勧誘の具体例を紹介しましたが、資金調達に関わる活動はもっと幅広に行われています。理事会(大口寄付者の勧誘)やヴォランティアの役割(独自イベントによる資金集め)は多岐にわたり、マーケティング部門のアウトリーチ活動も重要です。また、資金調達専門会社の存在も無視できません。このように見てくると米国の芸術団体の組織は、資金調達を主眼とした組織作りがされているといっても過言ではないでしょうし、職域の広さと専門性の高さを感じさせてくれます。いずれにしてもこのような組織的な取り組みによって、米国の寄付金マーケットは維持、拡大しています。

余談になりますが、筆者がこのファンドレイジングの調査をしたのは1997年なのですが(山一證券や拓銀が破綻、失われた10年と言われた時期)、今回コラムを執筆するに当たり、主だった米国のオーケストラのアニュアルレポートを見直してみました。すると何と、年間事業予算が軒並み20%以上も当時よりアップしているんです。リーマンショックなど何のそのといった感じです。米国の底力の強さに改めて感心しました。中国の台頭により、弱体化した米国と揶揄される昨今ですが、私たちはまだまだ米国に学ぶところが多そうです。(完)

プロフィール

髙橋 透 (グランシップ プロデューサー)
1982年4月、神奈川県企業庁入庁。1992年4月、神奈川県民ホール。2000年4月、県民部文化課神奈川芸術劇場開設準備担当。2010年4月、東京芸術劇場事業企画課長。2014年4月、(公財)東京都歴史文化財団事務局調整担当課長。2015年4月より現職。
1997年度文化庁芸術家在外研修員(アートマネージメント分野)。

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