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第1回「人口問題の由来と本質」①

更新日時2017.11.20

今日は本当に良いタイトルをつけていただきました。「人口問題から未来を発明する」、まさにその通りですね。「人口問題」「人口問題」と言われますけれども、私は、人口は問題じゃないんじゃないか、その背後にあることのほうがよっぽど大きい問題なんじゃないかと、考えております。
それからもう一つ、今日は非常に堅苦しいタイトルで「人口問題の由来と本質」とついています。私はもともと日本の人口を歴史的に研究するという事を続けてきました。歴史人口学というジャンルになります。その中から現代の過去1億年の人口変動の中から、現代を特徴づける人口問題の由来について話したいと思います。
今日は第1回ですので、全体像が見えるようにしたいと思います。その中から、どうして出生率が低いのか、或いは結婚しない人が増えたのか、ということを白井先生にお話しいただきます。それからまた地方創生とか、その前に地方消滅という怖い言葉がありますけれども、人口移動によってある地域は空白化していく、あるところは人が集まる、どうしてそういうことがおきてしまうのかを岸先生にお話しいただきます。
今日は大変嬉しいことに現役の大学生諸君も来てくれていますし、高校生も来てくれているんですよね。それからこちらには静岡県で若者会議ということをやっていますが、そのグループの人たちが新聞を作って、静岡の問題点など提案を出してくれているので、あとで見ていただいて、若い人はこんなことを考えているぞということを知っていただきたいと思います。
ご高齢の方もいらっしゃるのですが、私は先週ちょっとショックを受けたことがあります。静岡市の包括ケアセンターから手紙が来ました。開けてみましたら、30項目ぐらいいろいろ書いてあり、一人で買い物に行けますか、電車やバスに乗れますか、ちゃんと散歩しますか、と。もうそういうこと言われる歳なのかと思いました。この3月で70歳になりました。定年の65より前の時にあまり高齢者のことを言うと、いじめているように思われた。しかし、今は自分の事ですからもう平気で言えるようになります。歳をとるということはそういう強みもありますね。いろんな世代の方がいらっしゃるので、ランチ・タイムには交流していただいて、意見交換していただけたらと思います。

21世紀:人口減少の世紀(日本の総人口)

今年の元日のどの新聞にも出ていたことがあります。どういうことかというと、2016年、去年の出生数、生まれた子供の数が100万人を割りました、ということが一斉に書かれたことです。100万人を割ったって、ずっと減っているのだから驚くことないじゃないかという意見もあると思いますが、やはり大台を割るというのはなかなか大きなニュースになるんだな、ということです。
ちなみに、私は戦後の昭和22年の生まれですが、そのとき同じ年に生まれた私の仲間はどのくらいいたと思いますか?あるいは23年、24年生まれですが、だいたい270万人います。私が生まれた昭和22年は268万人です。2年後の24年が269万9000人ぐらいで、約270万人。いわゆる団塊の世代、ベビーブームの人たちは多かったんですね。そこから急速に減っていき、出生率が落ちた。その結果出生数が減ってきて、人口が減り始めたんですね。住民基本台帳ベースでいうと2008年がピークですね。2015年の国勢調査で分かったことですが、その前の2010年がピークだった。だからどちらにしても2010年前後に日本の人口はピークを迎えて、その後どんどん減っていきます。
今はちょっと減り始めたところで、ピンとこないけれども、2012年の社会保障人口問題研究所の推計は、2110年の国勢調査の年を基準にして50年先まで推計しています。出生率中位推計と書いてありますが、だいたいこのぐらいまでいくだろうなというかなり確率が高い予想です。それで見ますと、2110年に4300万まで減るんです。ピークは約1億2800万ですから、3分の1まで人口減ってしまいますよ、ということですね。

 

この年まで生きていられるのは誰でしょう?高校生諸君は2110年って何歳になりますかね?自分で計算してみてください。今17歳の人は2000年生まれですから、110歳か。その頃はもっと長寿になって、本当に4200万人になるかどうか、誰か証人になってください。可能性がありますからね。高校生に証人を頼みたいと思います。出生率がもっと下がっちゃうよ、という悲観的な推計ですと3000万人ぐらい。4分の1まで減ってしまいます。これは大変なことですね。

人口減少が今始まりました。これは大きな問題ですが、問題は人口減少だけですか?という事ですね。2つ大きな問題があります。もっと困っているのが、65歳以上の人口がどんどん増えている、それから0歳から14歳の人口はどんどん減っている、ということです。0歳から14歳の子供が減っているというのは、生まれる子供が減っているからどんどん人口が減っていくということですね。それから、大勢の人が長く生きられるようになった。その結果65歳以上の人が増えているし、その割合がもっと大きくなっていく。今は30%弱のところですが、これがあと、30年、40年もしますと40%を超えてしまいます。2.5人に1人が高齢者ということになります。そうすると、さっき包括ケアセンターの話をしたけれども、誰が介護をするのか、どうやって食べさせたらいいのか、年金はどうなるのだろうか、そういう大きい問題が出てきますし、若い人たちが減ってくるとこれからの労働力もどうなってしまうのか。15歳から64歳人口の割合は安定してきますけれども、数はかなり減るということもありますね。それが経済にも直結します。これが一つの問題ですね。

 

消滅可能性自治体

それからもう一つの問題というのは人口の分布です。ここにはちょっと衝撃的な言葉を使ったタイトルになっていますが、「人口消滅可能性自治体」と書いてあります。これは総務大臣をなさった増田寛也さんのグループが、地方消滅というレポートを出しまして、その中で黒く塗ったところは、2040年に人口1万人以下になってしまって、若い女性が50%以上減ってしまうというところです。グレーに見える所は、人口1万人は維持できるけれども、若い女性が半分以下に減ってしまうところです。ここで言っている若い女性というのは、20歳~39歳の女性のことです。つまり一番出産しやすい年齢の人たちですね。その人たちが2000年よりも半分以下に減ってしまうところを、消滅可能性自治体と言っているわけです。決してその集落が無くなってしまうわけではないけれども、人口がどんどん減っていくということです。福島は地震の影響があったのでデータがありませんけれども、その他、いたるところにそういう地域があります。人口が減少するというのは大きな問題ですが、大きく減少する地域と、それからあまり減少しない地域がある。大きく減少するのは、北海道から東北にかけてで、それから特に黒いところが目立つのは、西日本地域、山陰も含まれます。あまり減らないのが、名古屋とか東京か大阪近辺とかですね。でも、日本全体で見ると、人口消滅可能性自治体は増えてきます。このアンバランスが問題ということですね。

「人口問題」「人口問題」と言われていますけれども、確かに人口減少することは大きな人口問題ですが、ここには二つありまして、一つは人口オーナスなんていう言葉です。高度成長の時代を中心として、人口ボーナスの時代だったと言います。企業の業績が良くて、普通の賃金のほかに賞与として沢山もらえるという恩恵という意味ですね。生産年齢人口の負担が小さかった時代です。それに対して人口オーナスというのは、これも英語になりまして、負担、重荷です。何が重荷なのか、何が負担なのかというと、65歳以上の高齢者が増えてきますよということですね。実際には、従属年齢人口には、子どもも入っていますけれども、現在から将来にかけて、負担になっていくのは高齢者が中心となります。
それからもう一つ今お話しした消滅可能性自治体が増えていますよ、ということです。地方人口は流出していくことと、首都圏一極集中がこれからまだ続いていくという事ですね。例えばそれが一極集中とか、地方都市や集落が消滅するとか、一次産業が衰退するとか、それから社会資本の維持困難がおきる。税金が入ってこなくなって、道路や橋が造れない、バスが動かせない、ということになってくるし、山の手入れができなくなってくると、土砂崩れが起きやすくなるというようなことです。昨日もテレビの番組で、JR北海道をテーマにいろいろ取り上げていましたけども、どんどん路線を撤廃しないといけない、それから高波にやられて線路の下の土が持ち去られてしまって列車を動かせられない。けれども、お金もないし、乗る人も少ないから直せない。こういう問題が全国に波及する可能性があります。そうすると、自然災害に対しても弱い社会になってしまう可能性がある。人口減少もそうですし、高齢化もそうですし、国民経済が縮小していくと、財政危機が起きるとか、働く場所もなくなるし、所得を稼げなくなるかもしれない。それがいろんな角度から国民生活を維持していくことがだんだん難しくなってきたということが、今、懸念されていることですね。

 

講師プロフィール

静岡県立大学 学長 鬼頭宏先生

静岡県立大学 学長。静岡県生まれ。
慶應義塾大学経済学部卒業、同大学院博士課程単位取得退学。 上智大学経済学部教授を経て、2015年より現職。
静岡県人口減少問題に関する有識者会議 座長。美しい“ふじのくに”まち・ひと・しごと創生県民会議委員などを務める。
主な著書は、『人口から読む日本の歴史』(講談社)、『2100年、人口3分の1の日本』(メディアファクトリー)、『愛と希望の「人口学講義」』(ウェッジ)など。

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